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一章 0.エルムスランドの情勢

 建国から1469年。エルムスランドは変わらず世界最小の国土を誇っていた。
 エルムスランドは東西に細長い。
 エルムスランドの北と南を挟み込む形で山脈があるのでそちらを開墾することはできない。
 東西にはそれぞれ豊かで広大な国土を持った大国が控えていたから、そちらに侵略したところで無意味だった。
 帰り打ちにされるだけだろう。
 なによりエルムスランドの人はのんきだったし、英雄王の名に恥じる行いをしないくらいの分別を持ち合わせてもいる。
 大体が、狭いとは言えエルムスランドは豊かだったのだ。
 山脈は希少な鉱脈を持っていて、それだけで十分だった。国の中央に国土の三分の一もある森がなければもっとよかったかもしれないが、そればかりはどうしようもない。
 自然とはうまく折り合いをつけるしかない。
 この森は広大で、東西を阻む障害ともなっていたが、この豊かな森に恩恵を預かることの方が多かったので、エルムスランド人はその最小の国土にもおおむね満足していた。



 エルムスランドの経済の中心は王都ガードンにある。
 エルムスランドは世界最小の国土を誇っていたけれども、同時に世界最強の権力を誇っていた。
 その理由は明白だ。かつて世界を救った英雄王の子孫が統べ――そしてそれに協力した偉大なる双子竜が存在するのだから。
 当然、ガードンはエルムスランドの経済の中心だったが、同時に世界の中心でもあった。
 ガードンはエルムスランドの西側にある。西隣の国にも、森にも馬で行けば三日くらいで着くだろう。もちろん隣国の王都へはそれから一週間はかかるし、東隣の国の国境まではさらにかかる。
 交通の便は西向きには悪くないが、東方面になるとさっぱりなのが難点かもしれない。
 まあとにかくガードンはそこそこの規模を持っていた。
 王宮を取り囲むようにガードンの町が広がっている。
 人口は一万人ほど。区画整理がなされているのは、かつて魔物に完膚なきまで破壊されたこの土地を、きちんとした計画の元に再建した英雄王の手腕だろう。
 まず、王宮の近くに貴族の屋敷が建っている。エルムスランド貴族の数はそう多くないので、王宮の南に固まっている。王宮の東には各国の大使館。西には高位の神官が住んでいる。北にはエルムスランドの騎士団が本部を構えていた。
 その一連の囲みの外には庶民の町が広がっている。
 王宮から東西南北の四方に大通りが伸びていて、特に東と西の通りがにぎわっている。商店の多くが建ち並ぶのがこの東西の大通りだ。
 南北の通りには東西通りからあぶれた商店と、宿屋が軒を連ねている。
 そのなかで最大の建造物と言えば、やはり王宮だ。
 白く統一された建物の群れ。エルムスランド宮には大きく分けて3つの区画がある。
 まず最大の一つが政治と経済を司る政殿。その北に王族の住まう宮殿。そして神殿。
 それらの周りに様々な建物と、5つの塔がある。さらに城壁が張り巡らされて、この城壁までが王宮と呼ばれている。



 物語はエルムスランド宮の宮殿。その一角からはじまる。

※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

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