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6.
「それにしても」
弾むような足取りで奈由は歩きながら、くるりと振り返った。
「ほんっとうに魔法使いだったんだねぇ。サエルちゃん」
「結局お前信じていたのか? 実は信じていなかったのか?」
竜斗の突っ込みを気にしない素振りで、奈由はなだらかな坂の向こう、先ほどの場所を仰ぎ見る。
「魔女っ子と悪人の戦いが生で見られるなんて」
「あのなぁ」
呆れたように奈由を見てから、竜斗も後ろを振り返った。
「お前、危険だって言われたこと覚えてるか?」
「もう危険じゃないでしょ?」
「そうは言ってたけど――な」
竜斗は別れ際のサエルの慌てぶりを思い出して何となく首をかしげる。
もしかしたら、まだ何かあるのではないだろうか。
そんなこと言ったら奈由が騒ぐだろうから言わないけれど。
「あーあ。結局空を飛ばしてもらうって約束果たせなかったしなぁ。あーあ、また今度かぁ……って、どしたの? りゅーと。変な顔して」
奈由が不思議そうな顔で覗き込んでくるので竜斗は「いや」と首を振った。
「なんでもない」
引っかかりを覚えただなんてそんなこと、言っても仕方ない。
仮に何かあったとしても、竜斗にも奈由にもどうしようもないわけだし。
「にしても、ほんとに残念。サエルちゃん約束覚えててくれればいいけど」
「まだこだわってんだ」
もちろんよ、と奈由は力の限りうなずき、拳を握り締めて続けた。
「叔父さんや父さん達に本当のこと黙っておく口止め料と思えばっ」
「奈由……」
竜斗は呆れたように漏らしながら、何となく思った。
(そういや、彼女いつ頃までいるんだろう?)
はっきり帰る算段のつかない以上しばらくはいるんだろうけど。
いるのかどうかもわからないこの世界の神とやらに連絡が取れるまで、だなんていつになるのだかかわからない。
(ま、別にいいか)
内心ごちて竜斗は額の汗をぬぐった。
それにしても暑い。
(涼しくなる魔法とかあったら、使って欲しいよなぁ)
それじゃ奈由のことを笑えないよな、と竜斗は密かに自分に突っ込んだ。
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
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