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精霊使いと魔法国家
エピローグ
その翌日に割合あっさり精霊主たちと別れを告げ、それから。
俺はグラウトとの旅路に耐え、師匠の待つ家に帰り、俺は何とかうまいこと旅しているからオーガスさんが何か言ってきたら協力してあげるといいと師匠に言って嫌な顔をされ――面倒なことになるのが嫌だからうまいこと断ったのになんであいつに大義名分を与えることしちゃうのお前、と怒られ――た後に、無事旅を続けている。
時々飯を食いっぱぐれて大変なことになることもあったり……したこともあったけど、とりあえず行き倒れるようなことにはなってない。
そんなことになったらカディが怒るだろうし、オーガスさんがそれを知ったら爆笑しそうだよなと思うとなんとなく、あれこれ気が回るようになった。
旅の初めの方にカディに出会ったから、これまでは甘えてたところもあったんだろうな。今も甘えがないかと言われたら、ちょっとはあるけど。
一人旅にも少しは慣れたけど、あれだけ騒がしかったのが静かになってしまって物足りない。いればいたでうるさいのは間違いないんだけど。
カディはそのうちまた顔を見せるって言ってくれたけど、そのうちがいつのになるかよくわからない。
精霊主が強力な自分の力のすべてを自分の意志で使えないというのは伝説になっているくらい昔のことだ。その大昔、そうなった原因のくだらない言い争いに飽き飽きしたマスターの怒りが長い間冷めなかったなら、この間の事件のことで怒りに触れて気軽に出歩けないことも十分ありうる。
オーガスさんがどれだけ口添えしてくれるかが勝負なのかもしれないけど、なんでも面白がる節のあるあの人があてになるかどうかは未知数だと思うし。
それでも悲観的にならず一人旅を楽しもうって気になるのは、カディが熱心にそのうち戻ってくると言ってくれたからだ。
最後の夜、カディは意気投合したグラウトと一緒になって、そのうち合流する方法を考えていたくらいだ。
カディとグラウトの主導するその合流案は、グラウトの意思が反映されまくっていて正直どうかと思ったけど、他に妙案が思いつかなかった俺の負けだった。
それも、大敗だ。グラウトはまんまと俺が頻繁にフラストに立ち寄らなくちゃならないように話を持っていった。
グラウトにまめに連絡を取ること、できれば頻繁に立ち寄ること。そうすれば精霊主殿が無駄に世界を巡ることなく合流が叶うから――そう言われて行きたくないなんて、まさか言えない。
グラウトの思惑に乗るのは癪だったけど、借りもあるから俺は素直にその提案に乗った。元々そのつもりはあったわけだし。回数が思ったより増えたのは、ちょっと嫌だったけどさ。
その日がいつか知れないとしても、カディとグラウトが二人して合流方法を考えたんだからそのうち再び会えるだろう。そう思えば、前向きに楽しもうって気分になる。
行き倒れない程度に、カディのお小言を聞かないでいい状況を今は楽しんでいる。
いつか、再会したその時に俺はカディに言ってやるつもりだ。
「合流するのが遅くなったせいでフラストからあまり離れられなかったんだから、これから遠出するぞ」ってな。
-END-
2009.04.08 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
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