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精霊使いと少年王

2.取り残されて 〜カディ〜

「ちっくしょー覚えてやがれよおぉ―――」
 よかった。いつものソートです。
 さっきは、一体何があったのかと思いましたよ。
 恨めしげな声を残して連れ去られていくソートを、私は見送りました。
 左右を騎士に抱えられた姿はちょっと間抜けですね。
 それを見送って嘆息。
 視線を這わせると、周囲には多数の同族の姿。
 やれやれです。
 がっちりと取り囲まれて手も足も出ません。
 命じれば――精霊主として命じれば彼らも引くでしょうが――そんなことはできません。
 精霊が精霊に命じるなんて本来ありえないことですから。
 まかり間違って、正体が知れようものならとんでもないことになりかねませんし。 
 自分で言うのもあれですが、精霊主と言うものは、神秘的な存在でいないといけないんですよ。ええ。精霊主の仲間内で一番まともなのは私ですが、その私でさえ神秘性とは程遠いんですから。
 それに、過ぎた力を見ると、人間性格変わりますしね。一国の王ともなれば、その力を手に入れて他国へ侵略しようなどと考え出さないとも限りません。
 そこまでになったら精霊使いたりえないし、偏見かもしれませんが。
『彼をどうするおつもりです?』
 尋ねると、国王陛下は私を見上げました。
「さあ、な」
 呟いて彼は私を見ました。
「執務が終わってからじっくり考える」
 何を考えるつもりなんですか?
『それで、私は?』
 ソートのことはとりあえず置いておいて――まあ、何かありそうなら実力行使すればいいだけですし――、私は問い掛けました。
「余は執務がある。しばらく別室で待っていよ」
 高圧的に言われるとなんだかムカつきますね。
 しかし、足止めをしている周囲の精霊たちをどうにかしなければならないのですが、するわけにはいかないのですよ、だから。
 きっと私のことをはっきりした意思のある珍しい精霊と思っているのでしょうが――さらに、他の精霊を操るなどと知れたら余計扱いが大げさになりそうな気がします。
『あの、陛下』
 丁重にお断りして、ソートを解放してもらわなくては。
 私の呼びかけに彼は顔をしかめました。
「アーサーで構わぬ。名を聞いてかまわぬか?」
 私は問いかけに笑顔できっぱりと答えました。
『嫌です』

※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

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