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第三話 変な人と城上祭

3.親睦会の酔っぱらい

 翌日の授業は昼で終わり、それから優美は寮に戻った。
 結局昨日は寝るまでアイデアが浮かばなくて、布団でごろごろしている間に思いついてしまったのだった。
 わざわざ起きる気になれずにそのままいくつか考えていたらいつの間にか寝てしまって、考えながら寝ていたのが原因か朝目覚めると遅刻ぎりぎりだった。
 講義の最中も他に何かいい案はないかと考えに考えて、寮に戻って浮かんだアイデアを取り出したスケッチブックに書き散らす。
 コンビニで買ったおにぎりをつまみつつそんなことを繰り返して、たくさん書いた中から良さそうなものをいくつか選ぶ。
 そうこうしているうちに四時を回っていた。
 優美はふうと一息つき、軽く部屋を片付けてから出かける準備を始める。
 ほんの少しだけいつもよりおしゃれをして、大きめのカバンの中にラフ画を突っ込む。
 五時を回る頃にはすっかり準備が終わった。
 二丁目の――。
 優美は昨日もらったプリントを取り出して、走り書きを確認した。
「万人の酒樽」
 行ったことはないが、ここらでは有名なチェーン店だ。どこの二丁目だ、と普通なら言いたいところだけど優美も城上大の面々がよく飲みに行く二丁目は知っている。
「行きますか」
 そう自分に言って、カバンを持って出かける。
 早めに行ってウィンドウショッピングでも楽しめばいいなって思って。



 寮を出て、ふらふらと歩き始める。
 優美が住んでいる寮は城上大の両キャンパスの間にある。南の方に近いから、住んでいるのは南キャンパスの人間しかいないけれど。
 二丁目は寮から西の方向にある。緩やかな坂道を下ること二十分ほど。
 一口に二丁目といっても広い。ちょっとした繁華街がその真ん中にあって、この辺りで二丁目というとその繁華街のことを指すのだ。
 五十メートルほどの通りの中から指定された店を探し出すのはすぐ終わり、優美は時間つぶしにウィンドウショッピングを始めた。
 優美は服屋よりも雑貨屋や文具屋が好きだ。おしゃれに気を遣うよりも、雑貨や画材にお金をつぎ込む。
 だから自然と足はお気に入りの店に向かった。
 好きな店にいると、時間が過ぎるのが早い。今来たかと思ったらふと気付くと時計の針がぐぐっと進んでいて、慌てて店を飛び出す。
 小走りに店の前に戻ったときには六時十五分。そこにいたのは相原だけだった。
 彼女はすらっとした体に秋らしい装いを纏っていて、走ってきた優美に気付くとひらりと手を振った。
「そんなに急がなくてもいいわよ、まだみんな来てないから」
「そ、なんですか?」
「ええ。時間にルーズなのは褒められた事じゃないわね」
 呆れたように言う相原に優美はうなずいてみせる。
「でもまだもう少し時間がありますけど」
「ギリギリになっても、全員揃わないと思うわ」
 優美のフォローに相原はにべもなく言い放つ。
「全員来るんでしょうか」
「――冷静に突っ込むわね。二宮は詰めが甘いのよ。親睦会をするならするで、早めに連絡してなさいっての。昨日突然言われたところで、予定が入ってたら出ようがないかもしれないものね」
「ですよねえ。お店は予約してるんですか?」
「一応してるらしいけど。今日の六時半に十人くらいとか中途半端に」
 相原はそれも迷惑な予約の仕方よねえと呆れた調子でもらす。
 三階建てで、席数が結構あるからその辺の融通は利くのだろうが迷惑な話かもと優美も思う。
「しっかし、幹事くらいは来てもいいと思わない?」
「そうですね」
 うなずいたものの、優美としては首脳部の一人である相原がいれば問題はないと思う。この時間に誰もいなければもう中に入ってしまったのかと気をもまなければならなかっただろうから。
 予約の名前――おそらく二宮の名だろうが――も知らないで、店員に問いかけるのは緊張する。
 相原はカバンからすっと携帯を取り出した。流れるような動作でキーを叩いて、耳に当てる。
「……ったく、話し中か」
 しばらくして可愛らしい顔立ちに不似合いな舌打ち。
「二宮さんですか?」
「そう。誰と話してんだか」
 ぱたんと携帯を閉じると相原は取り出したときよりもなおスムーズな動作で再びカバンにそれを突っ込む。
 呆れたような顔で優美を見上げる顔つきが一瞬緩んだ。そのまま視線を遠くに向けて、相原は手をぶんと振り上げた。
「二宮! 遅いよ!」
 優美は振り返って、相原の視線を追った。
 二丁目は人通りが多い。優美はしばらく二宮の姿を探した。
 先ほどの相原の声が届いたとも思えない遠くにその姿を見つけ出して、彼女の目敏さに感心してしまう。
 携帯を片手にしゃべっている二宮が二人に気付いてひらりと手を挙げた。会話を終えたのか携帯を手に握り込むと、彼は小走りに近付いてきた。
「幹事なら三十分前くらいには着いてなさいよねえ」
「悪い悪い」
 文句を言う相原に苦笑混じりに二宮が応じる。
「途中で人生相談を持ちかけられた」
「はあっ?」
 相原が裏返った声を出す。優美も目を見張った。
「人生相談?」
 思わず呟くと、その言葉の重さの割に二宮は気軽にうなずいた。
「またなの。でもそれって人生相談?」
 そう続けた相原は人生相談とやらの中身に見当が付くらしい。さあ、と二宮は首を傾げる。
「どんな内容だろうといつも真剣に悩んでるからな」
 優しげで話しやすい雰囲気のある二宮のことだから相談を持ちかけられることがよくあるのかもしれない。
 そうなら、やはり昨日のは優美が気にしてしまっただけで二宮は意識せずに言ってしまったことなのだろう。そうは思ってたいたけれど、あーあってため息をつきたい気分だった。
 そんな風にいちいち気にしている自分がちょっと嫌だ。
「それで遅れるなんて、幹事失格よ」
「五分前だぜ、まだ」
「もっと早いところ来るのが幹事ってもんでしょう」
 二宮ははっきり苦笑しながら軽く手を挙げて相原を制して、ひょいと店内に入って行った。
「まったくもう、甘いんだから」
 呆れたような相原の呟き。ねえ、と同意を求められて優美はどう答えていいかわからず曖昧に微笑んでみる。
「結局、集まるのは七人だな」
 しばらくして戻ってきた二宮がそう告げる。
「さっきのは不参加の電話?」
 サークルのメンバーに二宮は携帯番号とメールアドレスを伝えている。相原の言葉に店内から戻ってきた二宮は頭を振った。
「戸田。ちょっと遅れるって」
「ふぅん」
 親しげなやりとりに介入できず、暇つぶしに視線を巡らせているとやがて見覚えのある顔が三つ揃ってやってきた。
 手を挙げたのは二宮で、先頭にいた一人が軽く頭を下げる。
「よし、先に入って始めるか」
 店の前に六人集まったのを見て二宮が行動を開始する。
 入り口のドアをくぐり抜けたところで、店員に声をかけ案内をしてもらう。広めの個室、座敷だった。
「席は、適当で」
 人数もしっかり言わずに予約していたにもかかわらず、ちょうど七つ座布団が準備してある。先ほど店内に入った際に変更を告げておいたのだろう。
 優美は四つ座布団がある側の一番手前に座った。首脳部と、先ほどの三人組とはグループみたいだし、一人で来ているのは優美だけだろう。
 正面には三人組で、優美の隣には相原が座った。
「紅二点ね」
 つぶいやいた相原が二宮をさらにその隣に呼んでいる。
「幹事さんは真ん中よ」
「こっち四人席なんだけど」
「細かいこという男は嫌われるわよ」
 弾むようなやりとり。顔をしかめながら二宮は相原に従って彼女の隣に座る。
「飲み放題込みコースだから。料理は適当に来るぞ。二時間までな。ドリンクはメニューの裏の青い枠の中からだそうだ。その他のを選んだら自腹だからなー」
「飲み放題で三千円って、えっらい安いわね」
「割引券をもらったんだよ」
 二宮は胸を張った。
「この間のコンパ?」
「よくおわかりで」
「わかるわよ」
 盛り上がっている室内で一人静かな優美に気付いて、相原は優美の方を向く。
「井下さん自己主張しなきゃー」
 まだアルコールも入っていないというのにテンションが高い。
「お前と違って物静かなんだよ」
「うっわ、二宮それ私に喧嘩売ってるの? 失礼よねー、井下さーん」
 同意を求められても困ってしまうというのに相原は優美に泣きつく真似をする。
 相原の後ろで二宮が苦笑している。優美は困り果てて相原を見下ろした。どうしようかと迷っているうちに店員がやってきたので彼女はすぐに背筋をピンと伸ばした。
「はーい、それじゃあビールの人ー」
 幹事の二宮を差し置いて点呼を取る。
「井下さんは?」
「未成年ですから」
 唯一手を挙げない優美に相原は首を傾げ、答えに驚いた顔をした。
「まっじめねえ。じゃあ何飲む?」
「ウーロンで」
「じゃあビール六つにウーロン」
 注文を聞き終えると店員は素早く去り、二宮は室内の注目を集めた。
「今日は全員集まるわけじゃないし、一人まだ来てないのがいるけど、とりあえず自己紹介から始めようか。飲み物がくるまでのつなぎに」
 知ってるとは思うけどと二宮がまず自己紹介して、隣の相原に振る。その次は優美だった。
 しどろもどろで名前だけ名乗って、次に回す。
 正面、優美に近い方から順に谷原、田中、外本。優美が見込んだとおりに同じ学科の知り合い同士らしい。
 ちょうど一巡したのを見計らったかのように飲み物と突き出しが届いて、乾杯の音頭は二宮がとった。
「えー、じゃあー、ありきたりだけどまあ前途を祝して乾杯」
「うわ、二宮おっさんくさ!」
「うるさいな、相原」
 すぐさま入った相原の突っ込みに嫌そうな顔をしながら二宮がジョッキを掲げ、みんなで乾杯を唱和する。
「ぷっはぁー」
「お前の方がよっぽどおっさんくさいだろが」
 ぐびぐびっとジョッキを傾けて満足げな相原に二宮が逆襲する。
 思わず優美が吹き出してしまうと、相原がきっと優美をにらんだ。
「今笑ったなー?」
「ごめんなさい」
「そんなに面白かったかね?」
 あぁーん、なんてすでに酔っぱらいのようなことを相原は言う。
「え、いや、ごめんなさい」
 優美が視線で二宮にSOSを送ろうと思うと、目敏く気付いた彼が神妙な顔でかぶりを振った。
 こんな時だけ何でそんなに鋭いんだと優美は内心愚痴りつつ、相原に視線を戻す。
 ご機嫌な笑顔で、驚いた。
「私ねえ」
 この人はもしかしてお酒のにおいだけで酔っちゃう人なんじゃないだろうかと危惧しながら、優美は相原の言葉に相づちを打った。
「この先就職に困ったら二宮とコンビを組もうかと思うのよ」
「え、は?」
 やっぱりすでに酔っぱらっている気がする。二宮が嫌そうな様子で彼女の隣に座ったのは彼女の酔いっぷりをよく知っていたからなのだろう。
「ぼけて突っ込む漫才コンビよ!」
 真顔で言い切る相原を見て、トリオがありえねえと言って笑ってる。
「いけると思うんだよね」
「無理、無理」
 二宮の冷静な突っ込みになにおーっとごねる相原。
「私の夢をバカにするなよー」
「就職に困ったらとか言ってる時点で、本気の夢じゃないだろが」
「むぅ」
「本職の漫才師さんに失礼なこと言うな」
「くー」
 二宮は手慣れた様子で相原をやりこめる。
「仲いいっすね、お二人」
 正面真ん中、田中の言葉に二宮は嫌そうな顔で逆に相原は笑みを深める。
「冗談だろ」
「ちょっと二宮、私みたいなプリティーな女の子と仲いいって言われてその反応は何?」
「自分でプリティーとかよく恥ずかしげもなく言えるよな」
 相原は苛立ちを紛らわせるようにジョッキを傾ける。
 優美は呆然とそれを見ながら突き出しをちょびちょびつまんだ。端から見ていると充分仲が良さそうに見える。
「まったく、失礼よねぇ」
 半分以上空けたジョッキをもてあそびながら相原は優美に同意を求めてきた。
 何故自分なんだという突っ込みは無駄だろう。右隣だから話しやすい、それだけの話。
「私の夢をバカにするなんてー」
 優美が対応に困っているのなんて相原は気にしない。ぐちぐちと先ほどと同じ事を繰り返した。
「でもまた何で漫才なんですか、相原さん」
 助け船を出したのは近い位置にいる谷原。面白がっているような顔での問いかけに相原はよくぞ聞いてくれましたとばかりに顔を上げる。
「ふっふっふ」
 店員がサラダを運んできたというのに怪しい笑いを浮かべて相原は胸を張った。
「それはもう、あこがれの人がいるからデスヨー」
 語尾が怪しい。
「なになに、相原ちゃんお笑い好き?」
 外本が身を乗り出すと、相原はノンノンと指を左右に振る。
「好きなアーティストさんがいるのよー。是非生でお目にかかってみたいのね!」
「ぶっは、それで芸人を目指すのはぶっ飛びすぎ」
 一斉に正面の三人が吹き出した。
「てか、それでお笑い目指すの明らかに違うだろ」
 勝手にコンビ候補にされている二宮が冷静に呟いた。
「コナカはバラエティーにたまに出るからいけると思うのよね」
「だからって漫才は間違ってるだろ」
「だって、歌は苦手だし」
 そういう問題じゃないよなあと優美は思いながら一人黙々とサラダをつついた。
 この場を沸かせられる程度には相原には素質はあるのかもしれない――とはいえ、ろくにテレビを見ない優美が素質があるといっても保証は全くできないが。
「素直にコンサートに行けばいいだろ」
「あんな遠くから見てもわからないでしょ? 生で親しくお話ししていただきたいわけよ私はー」
 だからねえ、二人で目指してみない?
 半分本気の相原の言葉に二宮は心底嫌そうな顔で首を横に振った。
「相原ちゃん相原ちゃん、でもバラエティーにたまに出るっつったってコナカ、テレビ自体あんまでないだろ」
「外本君、冷たいッ」
「事実を指摘しただけじゃないか」
 最初に言った外本よりも、次に言った二宮の方を相原は睨み付ける。
「今頻繁にCM流れてるんだから!」
「レギュラー番組もないだろ、あいつ」
「あいつなんて呼んでいい人じゃないのよコナカは!」
「呼び捨てのお前はどうなんだよ」
 ぐっと相原は詰まった。
「愛があるからいいのよ!」
「ほほー」
「ファンじゃないくせに詳しいのは反則だぞ二宮ー」
「好きで詳しいわけじゃないんだけどなー」
「どういう意味よ!」
 さてねえと二宮は笑い、相原が悔しそうに拳を握る。
 今は二人の間だけで完結しているからかまわなければいいのだと、優美はとにかく料理に手を伸ばす。
 騒々しい中、店員はこまめに料理を運んでくれていて、次々に手を伸ばしておけば暇を持て余すことはない。
 料理はおいしい。でもこの場へ来たことは後悔しつつあった。元々社交的な方でもなく、隣に座った相原が二宮と盛り上がってしまえば他に話す相手もいない。
 目の前の三人は三人でそれなりに話が盛り上がっているようだが、そこにも混じりがたい。
 せめて全員集まればもう少し女の子がいただろうにな、とそう思う。
「いい? コナカの良さはねえぇ」
「またか」
 相原が相変わらずの熱心さで声を張り上げたときに、ぽつんと静かにそんな言葉が聞こえた。
「戸田!」
 冷静な声に相原が言いかけた言葉を飲み込んで部屋の入口を振り返る。
「遅くなった」
「おう、おつかれー」
 戸田は空いている席を確認してすっとそこに収まる。二宮が彼にメニューを手渡した。
「またかって何よー」
「思ったことを言ったまでだが? とりあえず、ビールかな」
 相原が絡むような声を出すと、あくまでさらりと戸田が言う。
「ここは親睦会の会場であって、コナカのファンの集いじゃないと思うんだが?」
「共通の話題で盛り上がることが親密さを増すいい方法だと思うわ!」
「誰も彼もがコナカのファンだと思うなよ」
 痛烈な一言にぐっと相原が詰まる。相原は二宮よりも戸田の方が苦手らしい。
 彼女は救いを求めるように二宮を見て、彼がごまかすように料理に手を伸ばしたのを見て、あろうことか優美の方を見た。
「そんなことないよね?」
「えっ」
 たまたま箸を動かしてないからまずかった。優美は居心地悪く身じろぎした。
 親睦会の中心は間違いなく相原で、その彼女に問われた優美に注目が集まる。
「ええっと」
 どうしようという言葉が頭を渦巻いて、優美はうなだれた。
「ごめんなさい、コナカって人は有名なんですか?」
 おそるおそるそう口にすると、室内のほぼ半数が爆笑した。正面の三人組。
 驚いたように動きを止めたのは二宮と戸田で。
「えええええええ、それはないでしょー!」
 叫んだのは当然のように相原。
「しらないの? 新曲の『腕を組んで歩けるはず』はいじめ追放キャンペーンソングなのよ? 全局でCMが頻繁に流れてるんだからー!」
「テレビあまり見なくて」
 限界まで目を見開いて、相原は絶句した。
「そんなに疎い人がいたなんて……家に帰ってテレビ見たりしないの?」
「寮ですし。部屋にテレビもないので」
「コナカは何年も前からトップアーティストなんだから、実家の時に一度や二度くらい」
「家に一台しかテレビがなくて、リモコンは祖父が握っていたので」
「古風なおうちなのねえ」
 呆れたような中に感心したような響きがちょっと混じっている。優美はゆるりとうなずいた。
「そういう生活だったので、別にテレビがなくてもいいかなと。ニュースくらいしか見ないですよ」
「コナカを知らないなんて人生の半分は損してるわよー」
 少しだけトーンダウンした相原は、ぐびっとビールを飲み干してテンションを取り戻した。
「相原」
 そんな彼女に戸田が静かに呼びかける。
「少なくとも、共通の話題になりそうにないから、それはまたいずれにしろよ」
 二宮が後を続けると、仕方なさそうに相原は口をつぐむ。
「お気になさらず盛り上がって下さい?」
 この場の中心は間違いなく相原だ。彼女が盛り下がれば自然と盛り上がらなくなる気がして優美はじっと相原を見る。
「いや、このまま続けたらますますヒートアップして手に負えなくな……」
「わかったわ!」
 二宮の言葉なんて相原は耳にもしてないようだった。
「私が井下さんにじーっくりコナカの良さを伝えてあげる!」
 相原はがしぃっと優美の両手を握りしめた。
「え、いや、そんな意味じゃなくて」
 優美はおそるおそる相原を見た。その相原の隣で二宮が頭を抱えてるのを発見して早くも優美は後悔した。戸田は我関せずとばかりにサラダをつつきはじめている。
「大丈夫、コナカはほんとーにステキなんだから。親睦会が終わる頃には井下さんもすっかりファンになってること間違いないわ!」
「……それは洗脳するのか? コナカ教にか?」
 ぼつぼつ言う二宮の嫌みなんて相原に聞こえた素振りがなかった。救いを求めて周囲を見回しても、誰も応じてくれない。
 自業自得かもしれないけど。けど、なんだか納得がいかない。
 釈然としないものを感じながら優美は相原の言葉に適当に相槌を打つことを心に決めた。

2005.11.28 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

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