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第三話 変な人と城上祭

エピローグ

 城上祭後初の画商部の会合は、祭りの三日後だった。いつも通り一番に早めに会議室に顔を出し、優美は座り慣れた席に座った。
 それからほとんど時間を空けずにやってきたのは武正だ。
「やっほー」
 彼は入り口でひらりと手を振り、はにかんだ笑みを見せる。優美は軽い会釈で応じた。
「いつも早いねえ」
「時間に余裕があるから」
「そっかー。俺も今日は早めー」
 近づいてきた武正はすとんと優美の隣に腰を下ろして、にこにこ笑う。
 お付き合いじみたものを始めて、二日。メールを交わす回数が増えたということもなく、劇的に変わったことはあまりない。
 考えてみれば、最近の優美が何らかの方法で――主にメールでだが――もっともコミュニケーションを取っていたのは武正で、それを変えようはなかったのだ。
 ただ、そのメールの内容の質は少しばかり変化した。武正から届くメールに優美が返答に困るほど好意がふんだんに含まれたものが増えたのだ。優美が恋愛初心者であることを慮ってくれているのかある程度のところで引いてはくれているのだろうが、対処に困ることはよくある。
 意識して会う機会を作ろうとしてくるのもその一つで、その際にスキンシップを取ろうとしてくるのも困惑に拍車をかける。
 今も武正は優美の手に自分の手を重ねて笑みを深めている。振りほどこうとすると悲しそうな顔になるので、どうにも出来なくて困ってしまう。時を追うごとに優美は武正に弱くなってしまうようだった。この先どうなるのか、少し怖い。それが恋だというのなら、受け入れるしかないのだろうが。
 手に手を取ってのゆったりとした時間を破ったのは、扉が開く音だった。
「うっわ、しんじらんない」
 慌てて優美はバッと武正の手を振り払う。振り払われた方は案の定ちょっと悲しそうな顔をしたが、優美は冷静でいられない。
「なーにーそーれー」
 入り口で口を尖らせているのは相原だった。小柄な姿の後ろには二宮と戸田の姿がある。
「なんだかとっても納得いかないんだけどーっ」
「そうか?」
 戸田が短く問いかければ、相原はそうよと弾けるように答える。
「これから奥手のゆみちーに色々協力していくつもりだったのに」
「――協力するつもりだったんなら、協力するまでもなくうまくいったことをまず喜ぶべきなんじゃないか?」
「何でそうやって人の揚げ足を取るの二宮ーっ」
 優美が冷や汗をかきながらわたわたしている間に、相原と二宮はそんな風にじゃれあっている。
 武正は優美の肩を軽く抱き寄せ、にっこりと微笑んだ。
「これで公認の仲だねー」
 優美は顔を真っ赤にして武正から飛び離れると、文句を言うべく大きく息を吸い込んだ。

−END−
2007.07.03 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

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