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益田さんちのクリスマス

 さあ、今日はクリスマスイブ。日本中のこどもたちが楽しみにしている大事な日です。
 でも益田さんちの双子のこどもたちにはちょっとだけ憂鬱なイベントです。
 そんなことあるわけがないって?

 でも聞いてください。益田さんちの双子は12月25日。
 息子の三太くんも、娘の久里子ちゃんも7年前のその日になった頃元気に生まれてきました。
 お父さんの三郎さんも、お母さんの久子さんも、二人がクリスマスプレゼントのように思えて、大喜び。
 でも双子にとってはそれが問題の始まりだったのです。
 みんなも一度は考えたでしょう?
 クリスマスに生まれた子はかわいそうだなーって。

 でも、二人にとってそれはそんなに大きな問題じゃありませんでした。
 靴下を下げていい子にして寝たら、サンタさんはちゃんと二人にプレゼントを届けてくれているし、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんが誕生日プレゼントを贈ってくれます。
 お母さんはお菓子作りが趣味なので、クリスマスじゃなくてもケーキを食べることができます。

 二人が憂鬱なのは、お父さんとお母さんが張り切って付けた二人の名前でした。
 お父さんの名前から三をもらって、その上サンタクロースにちなんで三太。
 お母さんの名前から久をもらって、クリスマスにちなんで久里子――そう、久里子はくりこ、じゃなくてくりす、と読ませるのです。

「いいじゃないか、うきうきしてくる名前だろう」
 そうにこにこ言うお父さんや、
「可愛い名前でしょう、夢があるから」
 おっとり笑うお母さんには分からないのです。
 そういう名前を持った子供の苦労なんて。

 終業式が近くなるとみんなクリスマスの予感で浮き足立っていて、クリスマスが誕生日でなおかつそれにちなんだ名前を持つ二人は何かとからかわれる対象だったんですから。
 二人はクリスマス当日に学校がないことにはほっとしながら、いつものようにちょっぴり不満に思いつつ今日は早めにベットに入ります。

「久里子はいいなあ。三太、なんて聞いたら絶対サンタさんを思い出すもん」
「三太の方がいいよ。私の名前をえーごで言ったら、くりすますだ、なんだよ?」
 二人はお互いむっとして睨み合います。でもけんかはしません。

 だって、今日はクリスマスイブ。いい子にしていないとサンタさんが来ないんだから。

2004.12.24 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

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