IndexProject2007夏企画

ためらい編 坂上視点

「オッケーは出たぞ。ただ、問題がある」
 電話先で先輩はため息をついたようだった。
「俺の知り合いを数人連れてかなきゃならん」
「……へ?」
 問い返す俺の声は間が抜けていたと思う。
「昔は祖母のところにご近所さんと一緒に遊びに行ってたんだな。しばらく顔を見てないからついでに連れてこいだと。人数が多い方が楽しいだろうってのが祖母の言だ」
「それは俺も思うなー」
「三人か二人か、まだ声はかけてないが増えると思う。そうすると足がないんだな」
「バスとか電車は?」
「乗り換えが面倒だし、便が少ない。自家用車が一番なんだよ」
 にべもなく先輩は言い切った。
「お前と新と祐司と、彼女たちですでに六人だろ。俺の知り合いを入れて十人。レンタカーで頑張るにしてもさすがに十人はな」
「うーん。人数が多い方が楽しいし、誰か減らすのも嫌だしなー」
「もうみんなに声をかけたのか?」
「まだだけど。用事がある人がいれば減るかもだけど――どうかなあ。みんな暇なんじゃないかなー」
「暇とか言っていいのか受験生」
「う。いや受験生だからこそ家で勉強とかしてそうなわけでその中で息抜きをだねー」
「はいはいはい、わかったわかった。誰か運転が出来りゃいいんだが」
 先輩はそう愚痴ってため息一つ。
「春休みまで免許取得は禁止です」
「知ってる」
「先輩の知り合いは運転は――」
「免許持っている一人だけが参加してくれるか怪しいし、ペーパーだ」
「それは怖いっすね?」
「ああ」
 重々しい声が帰ってくるってことは相当危険なんだろうか。
「誰か他に運転ができて参加してくれる人がいればいいんだが……」
 ぼやきに近い言葉にふと思いついた顔はある。
「お前心当たりはないか?」
「あ、あー」
「……あるのか?」
「あるような、ないような」
「どっちだ」
 言葉に詰まる俺の耳に先輩の鋭い声が響いた。ドスがきいている。確実に無意識だ。春日井先輩はいい人なのにその辺で損してる。
「忙しい人だから、聞いてみないことには」
「じゃあ聞いてみてくれ」
「はーい」
 聞くのはタダだしね、俺は自分に言い聞かせて素直にうなずいた。
 あの人はなあ。そうめん流しって言ったら張り切って参加してくれそうだけどなあ――多忙な人だし。その前に、未夏ちゃんがうなずいてくれるかわからないし。

2007.08.15 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

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