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合流編1
武正の操る車は聖華高校までたどり着いた。校庭を横目に見ながら角を曲がり、正門へのストレート。
「あれ?」
「どうしたの?」
突然優美が驚いたような声を出したので、武正はちらりと横目で彼女を見た。問いかけに答えようともせず、優美は後ろを振り返る。
「今日ってもしかして、流しそうめんをするの?」
「え、ええ、そうですけど」
誰ともなく問われた言葉に、一番に答えたのは未夏だった。
「何でわかったの?」
武正が悔しそうな声を張り上げる。
「未夏ちゃんって中之城高校に通ってるんだものね。そうか」
「一人納得しないでー!」
正門の手前にたどり着いて車を止めると武正は助手席の彼女をじっと見た。優美は一つ息を吐いた。
「これから合流するって人の中に春日井次郎っている――でしょ?」
きょとんと瞬きをしたのは武正で、驚きの声を上げたのは未夏と坂上、それに麻衣子と篠津だった。車内の大半に衝撃をもたらした優美は構わず助手席の扉を開ける。
「知ってれば寄り道してもらわなくて良かったのに」
「ちょ、優美ちゃんーッ?」
武正が慌てて後を追う。顔を見合わせて他の面々もそれに続いた。
ワンボックスと同じように聖華高前に駐車されている車を優美はのぞき込み、誰もいないのを確認して正門へと進む。
「ねえ、優美、どういうこと?」
「いないわねえ」
優美は正門を少し入ったところできょろきょろしながら立ち止まった。
「ねえ」
武正が注意を引くように彼女の腕をぐいっと掴む。その腕を見下ろして、優美は大げさにため息をついた。
「あなたにされたのと同じことをしただけなのに」
「う」
「自覚はあるようでなによりだわ」
言葉をなくしてぱっと腕を放した武正をちらりと見て、優美は唇を持ち上げた。
「次から気をつけてね」
黙ってこくりと武正はうなずく。
「優美さんは、春日井先輩のことを知ってるんですか?」
彼女にやりこめられた兄の無言の訴えを受けて未夏はそう問いかける。同じことを言いたそうな高校生達を見回しながら優美は首肯した。
「車が止まってたでしょ。あれ、うちの隣のおじさんの車なの。今日お隣の息子さんが妹たちを連れて流しそうめんに行くって言ってたのよねえ」
「もしかしてそれが――」
「お隣さんは春日井というの」
未夏は驚きで目を見張った。
「うわ、世間って狭いね」
「狭すぎだわ」
坂上が興奮した声を上げ、麻衣子がぼそりと漏らす。
「あれが先輩の車だとしたら、先輩と井下さんの妹さんはどこにいるんだ?」
「多分家のが迷惑かけてるんだと思うわ」
「迷惑?」
問いかけた祐司が不審そうに目を細めるが、優美は気付かず、ぼやきつつ携帯を手にとった。
2007.10.15 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
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