IndexProject2007夏企画

準備編1

 メンバーは男女に分かれて準備をすることになった。
「先輩のおばーちゃんが乗り気で良かったなあ」
 男連中は外の仕事だ。クーラーの効いた車から出ただけで、それぞれの額には汗がにじんでいる。天気も良くこれから暑くなるという頃合いに外仕事は厳しいが、そういった坂上の顔には押さえきれない期待が浮かんでいた。
「好きなんだよあの人、誰かが家に来てくれるのが。近所の人によくしてもらってるみたいだけど、やっぱり一人暮らしは寂しいみたいで」
「ご迷惑じゃないかなーってちょっと心配だったんで、よかったー」
「むしろ大歓迎コースだな」
 女連中が入っていった玄関に目を向けて春日井はふうと息を吐いた。
「竹切るくらい、これだけ手があるんだからよかったのに」
「まあまあ、その分――通路っていういか何て言うのかほらあれ流す……樋?」
 坂上がぐるりと見回しても、誰もそれに答える言葉を持たない。
「何だっていいだろうが」
「言い出しっぺのお前が知らないものを知ってるわけがないだろ」
「樋がかなり近いからそれでいいんじゃない?」
 篠津、祐司、武正の順に口にして、
「流し台でいいんじゃないか?」
 春日井がぼそりと言う。
「流し台って言うと何か違うような気が……」
「でも樋ってのも違う気がするぞ」
 坂上が首をかしげて、篠津が唸る。そして全員顔を見合わせて、しばらくの沈黙。
「名前わからないなら流すヤツでいいんじゃないの?」
 ただ一人そんな問答に興味なさそうに辺りをきょろきょろ見回していた敬太が沈黙を遠慮なく破った。
「名前なんてどーでもいいから早くつくろーよ、じろ兄」
「ん……まあ、言われりゃそうか」
 一理あると春日井はうなずき、祐司と篠津がそれに続く。
「流すヤツだと味気ないですよねえ」
「何て言うんだろうなあ、流すヤツ……」
 納得しきれないのは坂上と武正の二人だけで。
「呼び名を考えるのはいいが、作業には参加しろよ」
 呆れ果てた捨て台詞を残して春日井は一行を先導して勝手口に向かった。

2007.12.05 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

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