IndexProject2007夏企画

準備編5 坂上視点

「あ、未夏ちゃんだ」
「んんー?」
 ああだこうだと打ち合わせをしたあとで散らばって作業を開始しようとした時、未夏ちゃんが優美さんと一緒に外に出てくるのが見えた。
 思わず呟いた声に正面にいるお兄さんは顔を上げて、後ろを振り返った。
「どうしたのー?」
 だけど見るのは妹の未夏ちゃんじゃなくて優美さんで、声をかけたのも優美さんに対して。
「暑いでしょ。のどが渇いたかと思って」
「わーい、さすが優美は気が利くなあ」
「余計なこと言わないの」
 まるで犬がしっぽを振るように近付いてくる優美さんにお兄さんは駆け寄っていく。ちょっと恥ずかしそうに優美さんは顔をしかめた。
「余計なことじゃないよ。こういうことをおろそかにすると簡単に人はすれ違ってしまうんだよ、ほんとだよ」
「あー、えーと、まあそうかもね」
 お兄さんの言葉に優美さんが反応に困ったのがわかって、未夏ちゃんははさりげなくお兄さんにグラスを手渡す。
「にーちゃん、優美さんが大好きなのはいいんだけど、ちょっと困るよねえ」
 それにあわせて優美さんがボトルからお茶を注いでいる間に、彼女は俺にもグラスを手渡してこっそりと耳打ちしてきた。
「困る?」
「困るよー。だっていきなり知らない人の集団に放り込まれるんだよ。私だったら困るもん。ほら、去年のハロウィンとか、すっごい困った」
「そうなんだ」
 言葉通り未夏ちゃんは困った顔をしている。そういえば、俺たちがつきあうきっかけになったハロウィンパーティの時、彼女は親友である里中さんにだまされるような形で参加することになったんだった。
 それは――確かに今回の優美さんの状況に似ている。
「坂上もにーちゃんも知らない人と話すの得意だからいいだろうけど」
「得意って訳じゃないよ?」
「私より得意だよ」
「――未夏ちゃんと優美さんってさあ」
 未夏ちゃんはきっぱりと言い切った。ハロウィンの時に困惑してた未夏ちゃん、今そうめん流しの時に困惑してお兄さんに当たり気味の優美さんって……。
「表現方法が違うけど、なんていうか微妙に似てるよね」
「そう?」
「なんとなくだけど。それこそ、初めての人には臆しちゃうようなところとか」
「あ、それはあるかも」
 ぼかして言ってみると未夏ちゃんはあっさりとうなずいたから、自分で聞いたくせに俺は軽くへこんだ。
 だってさ、未夏ちゃんが言うには俺はお兄さんに似たところがあるってことだし、お兄さんの彼女である優美さんもほんのちょっと未夏ちゃんと傾向が似てるって――それってどうなんだろう。
 未夏ちゃんにブラコンの気があるようにお兄さんにシスコンの気があるのはかなり明らかな話なんだけど……でもやっぱりちょっとへこむよなあ。何で未夏ちゃんとこって兄弟仲がよすぎなんだろう。
 悪いよりいい方がいいんだけどさ。それはそうなんだけどさ。でもさでもさー。

2007.12.19 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

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