精霊使いとその師匠〜ある日の朝の食卓で
▼ いやまて、それより朝飯朝飯。
いやまて、それよりも朝飯朝飯。
とにかく師匠の無駄なこだわりで、そもそも広い食料庫にはたくさんの食材がある。どこの国の、いつ頃作られたのかわからないような保存食や、調味料がそのほとんどだけど。
おそらく師匠には収集癖がある。珍しい物があったらとにかく手を出してみるのが師匠だ。
俺にはどう使うか謎な食材も多々ある。師匠はそれでなんか色々作ってるけど、いちいち覚える気にもならない。というか、貼ってあるラベルは師匠の手書きだったりそうじゃなかったりするんだけど、俺にわからない言葉で書いてあるのもたくさんあって、判別がつかないってのが正しい。
判断がつかない物に手を出す気も覚える気もなければ、自然と使える物はオーソドックスな物になるわけだ。
塩とか胡椒とか、その辺な。
食材庫は主に3つのエリアに分かれてる。手前右側、一番狭いのが調味料エリア。いつも使うのは台所にあるから、ここに入ってるのは師匠の趣味で集めたやつと、買い置き分。
壁で仕切ってある一番奥は、水と風の精霊の力でキンキンに冷やしてる保存庫で、凍らせた肉や魚、果物とかを主に入れてある。
手前左側はその他のあれこれを置いてる。チーズとか、燻製とかそういったものをな。
師匠が案外マメに片付けてるみたいだけど、俺からしたら訳がわからないものが多いから雑然としている食料庫を軽く見回す。
奥から肉をとってきてもいいけど、凍った肉が溶けるまでは結構時間が掛かる。それよりは、と視線を巡らせて、一番に目についたのは棚の上の方に置いてあるハムだった。
肉こそ買ってきたものの、ハムもやっぱり師匠のお手製だった。
町で売ってないって訳でもないのに、師匠はそういうところに無駄にこだわるところがある。手に取ると結構な重量感。
自然と笑みがこぼれてしまう。よし、今朝のメインはハムに決まりだな。
ハムを手に台所に戻ると、包丁で分厚めに四枚切り分けた。元の肉塊が大きくなかったから、ハムもそれほど大きくない。朝は軽めで問題ないし、一人二枚で充分だろう。厚めに切ったし。
焼いたらきっと食欲をそそるだろう。
ああ、腹減った。
俺は他にもいくつかの食材をそろえて台所に舞い戻った。
END No.3
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