精霊使いとその師匠〜ある日の朝の食卓で

▼ 「なんか誤魔化そうとしてないか?」

「なんか誤魔化そうとしてないか?」
「誤魔化す?」
 師匠は何を言っているんだと言わんばかりの表情。
「俺はお前に秘密にしてることなんて――そりゃあたくさんあるわけだが」
「あるのかよ!」
「普通の親子だって自分のこと何もかも全部話すわけじゃなかろ」
「――それはよくわかんないけど」
 ふっと師匠は笑みを漏らした。普段はあんまり見せない、すんごい大人なヤツ。
「聞かれれば答えるぞ? その後の結果は保証しないけどな」
 それがすぐさまおもしろがってるそれに変化する。
「やっぱりなんか、俺を煙に巻こうとしてない?」
「いや? でも昔ならあっさり誤魔化されてたのに成長したねー、ソート」
「やっぱり誤魔化そうとしてんじゃないか」
「まさか」
 師匠はとんでもないってばかりの顔で言って、でも次の瞬間には笑っている。
「しーしょーおー」
「いや悪い悪い。ついな、つい」
 師匠は肩を揺らすのをやめて、俺をなだめようとする。じっとりと見つめてみると、師匠はようやく真面目な顔。
「お前も、精霊使いがどんな仕事を普通してるのか、いい加減わかるだろ?」
「うん、まあ」
 フラストの王宮で働く精霊使いのブロードさんは、俺が知るだけでも何度も何度も師匠に「あなたもフラストで働けばいいのに」って言っている。あの人が言うには、精霊使いは普通はどこかの国家に雇われてるものらしい。
 ブロードさんはフラストの中では一番の精霊使いで、そのブロードさんが言うには師匠の方がもっとすごいらしい。
 それなのに田舎暮らしをしているなんてもったいないっていうのが、ブロードさんの主張。
「魔法使いと精霊使い、できることはそう変わらない。でも、精霊使いの方がより自然の事象が操れる上に、努力では埋められない才がいる。だから、精霊使いは希少なわけだ――わかるか?」
「ああ?」
 なんだか微妙に話がずれた気はするから、俺は曖昧にうなずいた。「本当にわかってるのかー?」って疑わしげな顔をしたけど、師匠は深くは突っ込まないことにしたらしい。
「その希少な価値に対する対価は大きいわけだ」
「対価?」
「要するに――報酬だな。莫大なとは言わんが、多少頑張って働けば一財産になるわけ」
「はあ」
「で、俺はかつて非常に頑張ったことがあるわけだ。慎ましく生活したら数年は軽く持つくらいの稼ぎはあるさ。そしてそれだけ頑張ったからには少しぐらい隠居暮らししたって構うまい?」
「隠居って、師匠……」
 しかも慎ましくって。その言葉のイメージと師匠、全然あわねえから。
「なんか言いたいことがありそうだねー、ソート?」
「いや、なんでもない」
 言った日には何て突っ込まれるかわからない。口早に答えて、俺は突っ込まれないうちに朝食に集中することにした。

END No.2

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