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プロローグ
落ち着いた真面目な子、というのが真の最初の印象だ。だけれど、それをそのまま書くのは面白みもドラマティックさも欠ける。かといって、はじめて言葉を交わしたあとの感想を書くのは色々とためらわれる。
初対面で人の名前コンプレックスを刺激したのでどうしてくれようかと思いました、なんてな。そんなこと書いた日には由希が気にするだろうし、さらに両親に知られた日には大いに嘆かれるだろう。正直両親の嘆きは慣れたものだからどうでもいいんだが、彼女が気にしてしまうのは避けたかった。
友紀なんぞというぱっと見女みたいな名前を彼女が誤解して、本当のことを知ったあとにぽかんと素の顔を見せなかったらまさか付き合ったり結婚したりなんてことにならなかっただろうから――職場の彼女はガードが堅いからそういうきっかけでもなければ親しくもなれなかっただろうし、惹かれもしなかったと思う――この場合そう書くのが正しいような気もするんだが、長年のコンプレックスはそうそう払拭できない。
俺はA四の薄っぺらいコピー用紙を前に腕を組んで大いにうなった。
さて、どうするべきかね。
2008.10.20 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
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