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プロローグ
個人的に親しいわけでもない先輩から、結婚式に招待されても困るのよね。
おめでたいことだし、仕事ではお世話になってるんだから、結婚すると聞けば一応「おめでとうございまーす」なんてお義理で声をかけることだってするわよ。
だけど心の底から祝ってるかって言われたらそういうわけでもないわけで、きっちりとした招待状を手渡されてもただ困ってしまう。行く気もありませんと即切り捨てるには難があるし、かといって行くにも抵抗がある。
ドレス――は、まあ友達の時に着ていったのを着ればいいし、ヘアアレンジも自分で何とかできる。だけど結婚式披露宴となれば避けて通れないのがご祝儀だ。
そりゃ、職場ではお世話になってるわけだし、お祝いする気がゼロとは言わない。だけど参加するしないではご祝儀の額が桁違いでしょー?
断り切れず受け取ってしまった招待状を、私は家に帰って開けて、うなる。日取りはスケジュール帳を何度見ても真っ白な、ある大安吉日。
並んで記される名前は三枝友紀と畑本由希子。
招待を断る理由なんて、やる気になればいくらでもねつ造できるけど――。
色々考えて、出席に丸を付けることにした。
気乗りしない気持ちに間違いはないけど、そうするだけの理由がある。理由の大半は打算で、残りの少しは好奇心。
出て行くものは大きいけど、入ってくるものも小さくはないはずだって自分に言い聞かせた。
2009.06.26 up
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
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