精霊使いとその師匠〜ある日の朝の食卓で

▼ がっつり食いたいな。

「がっつり食いたいな」
 家の食材庫は、男の二人暮らしの割に結構な品揃えを誇っている。
 師匠の趣味だ――たぶん。
 あの人は結構おおざっぱなくせに意外とこだわるところはこだわる。
 「ソートは何でそう食い意地が張ってるんだ」なんて時々言うけど、それは間違いなく師匠が原因だ。
 師匠の食に対するこだわりはある意味俺以上だし、それを証明するかのように師匠の料理の腕は――フラストの王宮の料理長にも引けをとらないと俺は思ってる。
 作る料理の質は大分違うけど。
 無駄なところで才能を浪費しているのが俺の師匠だ。バリエーション豊かなメニューを俺が覚えきれないくらい豊かに操るくらいだから、師匠は本職の料理人として食べていけると思う。
 王宮は嫌いだからとか言って田舎に引っ込んでるくらいなら、町に出てレストランでも開けばいいのに。
 師匠の料理はどちらかといえば庶民派で、うまいし。いざ始めたらすごく繁盛しそうなんだけど。
 前にそう実際に口にしたら「今はそんなに困ってるわけじゃないからね」とか言ってた。
 師匠がまともに働いたところを――家以外で、ってことだけど――見たことがないけど、たまにフラストにいってあれこれしてるので充分儲かってるんだろうか。謎だ。


 ▼ そういや、師匠って謎すぎるよなー。
 ▼ いやまて、それより朝飯朝飯。

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